東京地判平25・1・16交民46巻1号49項・自保1894号103項
右耳の11級4号の聴力障害を否定し、耳鳴りと併せて14級相当と認めた事例
普通乗用車の後部座席に乗車中、車両が雪のためスピンし坂道を下り電柱に右後部を衝突し、頭部や右肩を強打し、右側頭骨骨折、右鎖骨骨折等の傷害を背負った事務職男性会社員(固定時36歳)が右耳鳴り、右難聴、右耳閉塞を訴え、聴力検査で高度難聴が、側頭部CTで右耳小骨離断が認められ右難聴、右耳鳴りで症状固定とする自賠責後遺障害診断書が作成されたが、その後左難聴も訴えたため、「傷病名」を右耳小骨離断、内耳挫傷、左混合難聴、内耳挫傷、「自覚症状」を両側難聴、耳鳴りで症状固定とする自賠責後遺障害診断書が作成されたが、自賠責保険では14級3号該当の認定を受けた事案で、聴力障害の等級及び障害の程度について「一耳の平均純音聴力レベルが70dB以上80dB未満のもの」は11級4号に該当すると定めているところ、症状固定後の純音聴力検査結果(6分式)のうち右耳の平均値は69.095dBであること、事故後9年経過後左難聴を訴え出し、純音聴力検査上左耳にも異常を示すようになったとし、このような症状経過に照らすと左難聴等左耳の異常に由来する症状については本件事故との相当因果関係を認めることはできないとして、本件事故と相当因果関係を認められる後遺障害は14級相当の右耳小骨離断に伴う右難聴、耳鳴りであると認定し、31年間労働能力喪失5%として事故前年の年収を基礎に逸失利益合計364万円余を認め、後遺障害慰謝料110万円を認めた。
逸失利益の計算
逸失利益とは、後遺障害が残ったことで、本来受け取れるはずだった利益のことです。
計算式は【逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×中間利息控除係数】で求めます。
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率× ライプニッツ率
例えば、上記の判例の被害者が、36歳(男性)とした場合、逸失利益と慰謝料の計算を説明すると
被害者項目 | 詳細 |
年齢 | 36歳 |
年収 | 450万円 |
労働能力喪失率 | 5% |
後遺障害等級 | 14級相当 |
ライプニッツ係数(67歳までの31年間で算出) | 15.5928 |
逸失利益=
基礎年収450万円×5%×15.5928=3,508,380円(今回の判例をシュミレーション)
逸失利益で3,508,380円となります。
労働力喪失率表
後遺障害第14級の場合、一般的の労働能力喪失率は上記では5/100となります。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 | 後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
第1級 | 100/100 | 第8級 | 45/100 |
第2級 | 100/100 | 第9級 | 35/100 |
第3級 | 100/100 | 第10級 | 27/100 |
第4級 | 92/100 | 第11級 | 20/100 |
第5級 | 79/100 | 第12級 | 14/100 |
第6級 | 67/100 | 第13級 | 9/100 |
第7級 | 56/100 | 第14級 | 5/100 |
労働能力可能年齢である67歳に至るまでの31年間と認めた。
労働能力喪失期間(年) | ライプニッツ係数 |
30 | 15.3725 |
31 | 15.5928 |
32 | 15.8027 |
33 | 16.0025 |
34 | 16.1929 |
35 | 16.3742 |
36 | 16.5469 |
37 | 16.7113 |
38 | 16.8679 |
39 | 17.0170 |
40 | 17.1591 |
後遺障害の慰謝料
第14級の後遺障害慰謝料は、下記表では、裁判所基準では110万円となります。
等級 | 自賠責保険基準 | 裁判所基準 |
第1級 | 1,100万円 | 2,800万円 |
第2級 | 958万円 | 2,370万円 |
第3級 | 829万円 | 1,990万円 |
第4級 | 712万円 | 1,670万円 |
第5級 | 599万円 | 1,400万円 |
第6級 | 498万円 | 1,180万円 |
第7級 | 409万円 | 1,000万円 |
第8級 | 324万円 | 830万円 |
第9級 | 245万円 | 690万円 |
第10級 | 187万円 | 550万円 |
第11級 | 135万円 | 420万円 |
第12級 | 93万円 | 290万円 |
第13級 | 57万円 | 180万円 |
第14級 | 32万円 | 110万円 |
「赤い本より」
自賠責基準は、交通事故被害者に最小限の補償をするために設けられた慰謝料の基準です。
裁判所基準は、裁判所の判例などを基に、弁護士が損害賠償請求をする際に目安となるよう作成された基準であり、慰謝料に関する3つの基準の中で高めになっています。金額はあくまでも請求の目安で、裁判もこの金額で認められるわけではないことを理解しておいて下さい。
(注)
・上記金額には、入通院治療費等と休業補償などは含まれておりません。
・過失相殺はないものとします。
・上記内容は、シュミレーションであり、東京地判平25・1・16の原告とは無関係となります。
弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼すれば、裁判所への代理人出廷や保険会社との交渉も弁護士が行ってくれます。交通事故のあらゆる被害で損をしないためには、弁護士に依頼されることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか?慰謝料については、保険会社から費用負担が少ない示談金の提案がありますので、金額が妥当なのか?初めての事故などで、分からないと思います。こんな場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。弁護士相談費用が無料の掲載事務所を多く掲載していますのでご安心下さい。まずは、弁護士に相談しましょう!