大阪高判平28・3・24自保1972号1項
意識障害できず有意な画像所見のない場合で7級の高次脳機能障害を認めた事例
男性(事故時19歳・大学生)が自転車で走行中乗用車に衝突されて転倒し、頭部外傷、頸椎、腰椎捻挫等の傷害を負い、902日入通院(うち入院59日)後、日常生活は一応自立しているものの、事故後物忘れがひどく、何度も同じことを尋ねたり、買い物に出ても何を買うのか忘れたり道に迷うことも多く、右不完全麻痺により安定した歩行が困難であるうえ、右同名半盲(注:右目の半盲のこと)や半側空間無視により、側溝に落ちそうになったり、車に接触しそうになるなど一人での移動が困難な状況にあるケースで(自賠責保険は局部神経症状で併合14級)、原審(京都地裁)は事故後の昏睡がなくびまん性軸検損傷の発病は認められず、
また軽度外傷性脳損傷のWHOの診察基準の第1の要件(受傷後に昏迷又は見当識障害、30分以内の意識喪失、24時間未満の外傷性健忘症、これら以外の短時間の神経学的異常)も満たさず、脳の器質的病変が認められないとして男性の高次脳機能障害を否定し非器質性精神障害として9級相当と認めたが、これを覆し、男性の右上肢の運動機能障害、感覚障害、視覚障害及び高次脳機能障害は交通事故による頭部外傷に起因するとする医師の意見書における、MRIやCTでは画像上明らかな脳実質内の異常信号や外傷性変化を指摘できないが、
脳内血流を描出するSPECTの検査結果から全体的な脳血流が高度に低下しており、事故以前にはまったく通常の日常生活を営み大学法学部の高度な研究生活に耐え得る知性を有していた男性において、現在の症状が多岐にわたっていることや脳血流が全体にわたって高度に低下していることからすると、頭部に対する衝撃によってびまん性軸索損傷が発症している旨の医師の意見書の記載は信頼に足り、
これを支持する別の医師の意見もあること、また、事故後の意識障害や脳萎縮が画像上確認できない点について、受傷時の意識障害の有無をもって脳外傷後高次脳機能障害の発生を論じることには問題があるとの見解もあること、厚生労働省の高次脳機能障害の診断基準には、「検査所見で脳の器質的病変の存在を明らかにできない症状について、慎重な評価により高次脳機能障害として診察されることがあり得る」との補足説明があることに照らし、男性に本件事故後に意識障害が確認できず、
頭部CTやMRI等の画像診断で有意な所見を見出すことができないとしても、それらを絶対視して高次脳機能障害の存在を否定することは相当でないとし、右上下肢の運動機能障害及び脳機能に関する症状等について7級(併合6級)に該当すると認定し、5,715万円余の逸失利益と後遺障害慰謝料1,180万円を認めた。
逸失利益の計算
逸失利益とは、後遺障害が残ったことで、本来受け取れるはずだった利益のことです。
計算式は【逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×中間利息控除係数】で求めます。
本件の逸失利益は、5,715万円を認めたものとなります。
後遺障害と労働力喪失率表
後遺障害第6級の場合、一般的の労働能力喪失率は下記では67/100となります。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 | 後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
第1級 | 100/100 | 第8級 | 45/100 |
第2級 | 100/100 | 第9級 | 35/100 |
第3級 | 100/100 | 第10級 | 27/100 |
第4級 | 92/100 | 第11級 | 20/100 |
第5級 | 79/100 | 第12級 | 14/100 |
第6級 | 67/100 | 第13級 | 9/100 |
第7級 | 56/100 | 第14級 | 5/100 |
後遺障害の慰謝料
第6級の後遺障害慰謝料は、下記表では、裁判所基準では1,180万円となり、本件についても、裁判所基準が認められたケースとなります。
等級 | 自賠責保険基準 | 裁判所基準 |
第1級 | 1,100万円 | 2,800万円 |
第2級 | 958万円 | 2,370万円 |
第3級 | 829万円 | 1,990万円 |
第4級 | 712万円 | 1,670万円 |
第5級 | 599万円 | 1,400万円 |
第6級 | 498万円 | 1,180万円 |
第7級 | 409万円 | 1,000万円 |
第8級 | 324万円 | 830万円 |
第9級 | 245万円 | 690万円 |
第10級 | 187万円 | 550万円 |
第11級 | 135万円 | 420万円 |
第12級 | 93万円 | 290万円 |
第13級 | 57万円 | 180万円 |
第14級 | 32万円 | 110万円 |
「赤い本より」
自賠責基準は、交通事故被害者に最小限の補償をするために設けられた慰謝料の基準です。
裁判所基準は、裁判所の判例などを基に、弁護士が損害賠償請求をする際に目安となるよう作成された基準であり、慰謝料に関する3つの基準の中で高めになっています。金額はあくまでも請求の目安で、裁判もこの金額で認められるわけではないことを理解しておいて下さい。
弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼すれば、裁判所への代理人出廷や保険会社との交渉も弁護士が行ってくれます。交通事故のあらゆる被害で損をしないためには、弁護士に依頼されることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか?慰謝料については、保険会社から費用負担が少ない示談金の提案がありますので、金額が妥当なのか?初めての事故などで、分からないと思います。こんな場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。弁護士相談費用が無料の掲載事務所を多く掲載していますのでご安心下さい。まずは、弁護士に相談しましょう!
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