名古屋地判平21・1・16自保1795号21項
減収のない電池製造業務に従事する会社員の嗅覚脱出につき、67歳まで労働能力喪失率14%の逸失利益を認めた事例
原告(男性・固定時38歳・上場会社技術職会社員)が、横断歩道歩行横断中に普通貨物自動車と衝突した事故により、脳挫傷等の傷害を負ってほぼ1年入通院した後に、脳挫傷痕や頸部痛等のほか嗅覚脱出の後遺障害をのこしたとされるものの、事故後も事故前と同様に電池製造業務を担当している事案につき、嗅覚脱出の逸失利益について「職務を遂行する上では、製造過程において種々の科学物質が用いられていることから、製品の品質を適切に管理する上でも、また、作業上の安全を確保する上でも、嗅覚に頼るべき状況が少なからずある。しかし、原告は、本件事故によって嗅覚を失ってしまったことから、現在、職場において、嗅覚を補うために補助者を用いるなどして、その職務を遂行している」と認定し、現在のところ収入や降格といった不利益は生じていないが、上記の職務内容や勤務先会社の業務内容等を考慮すれば、嗅覚脱出という障害が原告の労働能力に相当の影響を与えることは明らかであり、症状固定時の年齢38歳であることにも鑑みると、将来嗅覚脱出の障害による経済的不利益が生じるおそれが高く、また、原告は、今後とも、嗅覚脱出の障害を補うため、特別な努力や対策の継続を余儀なくされる旨認定し、労働能力喪失率を14%とするのが相当であるとした。
逸失利益の計算
逸失利益とは、後遺障害が残ったことで、本来受け取れるはずだった利益のことです。
計算式は【逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×中間利息控除係数】で求めます。
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率× ライプニッツ率
例えば、上記の判例の被害者が、38歳(男性)とした場合、逸失利益と慰謝料の計算を説明すると
被害者項目 | 詳細 |
年齢 | 38歳 |
年収 | 500万円 |
労働能力喪失率 | 14% |
後遺障害等級 | 12級 |
ライプニッツ係数(67歳までの29年間で算出) | 15.1411 |
逸失利益=
基礎年収500万円×14%×15.1411=10,598,770円(今回の判例をシュミレーション)
逸失利益で10,598,770円となります。
労働力喪失率表
後遺障害第12級の場合、一般的の労働能力喪失率は下記では14/100となります。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 | 後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
第1級 | 100/100 | 第8級 | 45/100 |
第2級 | 100/100 | 第9級 | 35/100 |
第3級 | 100/100 | 第10級 | 27/100 |
第4級 | 92/100 | 第11級 | 20/100 |
第5級 | 79/100 | 第12級 | 14/100 |
第6級 | 67/100 | 第13級 | 9/100 |
第7級 | 56/100 | 第14級 | 5/100 |
労働能力可能年齢である67歳に至るまでの29年間と認めた。
労働能力喪失期間(年) | ライプニッツ係数 |
25 | 14.0939 |
26 | 14.3752 |
27 | 14.6430 |
28 | 14.8981 |
29 | 15.1411 |
30 | 15.3725 |
31 | 15.5928 |
32 | 15.8027 |
33 | 16.0025 |
34 | 16.1929 |
35 | 16.3742 |
36 | 16.5469 |
後遺障害の慰謝料
第12級の後遺障害慰謝料は、下記表では、裁判所基準では290万円となります。
等級 | 自賠責保険基準 | 裁判所基準 |
第1級 | 1,100万円 | 2,800万円 |
第2級 | 958万円 | 2,370万円 |
第3級 | 829万円 | 1,990万円 |
第4級 | 712万円 | 1,670万円 |
第5級 | 599万円 | 1,400万円 |
第6級 | 498万円 | 1,180万円 |
第7級 | 409万円 | 1,000万円 |
第8級 | 324万円 | 830万円 |
第9級 | 245万円 | 690万円 |
第10級 | 187万円 | 550万円 |
第11級 | 135万円 | 420万円 |
第12級 | 93万円 | 290万円 |
第13級 | 57万円 | 180万円 |
第14級 | 32万円 | 110万円 |
「赤い本より」
自賠責基準は、交通事故被害者に最小限の補償をするために設けられた慰謝料の基準です。
裁判所基準は、裁判所の判例などを基に、弁護士が損害賠償請求をする際に目安となるよう作成された基準であり、慰謝料に関する3つの基準の中で高めになっています。金額はあくまでも請求の目安で、裁判もこの金額で認められるわけではないことを理解しておいて下さい。
(注)
・上記金額には、入通院治療費等と休業補償などは含まれておりません。
・過失相殺はないものとします。
・上記内容は、シュミレーションであり、名古屋地判平21・1・16の原告とは無関係となります。
弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼すれば、裁判所への代理人出廷や保険会社との交渉も弁護士が行ってくれます。交通事故のあらゆる被害で損をしないためには、弁護士に依頼されることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか?慰謝料については、保険会社から費用負担が少ない示談金の提案がありますので、金額が妥当なのか?初めての事故などで、分からないと思います。こんな場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。弁護士相談費用が無料の掲載事務所を多く掲載していますのでご安心下さい。まずは、弁護士に相談しましょう!
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